吉田兼好著 徒然草 1330~1331年
第百十六段 「寺院の号」
寺院の号、さらぬ万の物にも、名を付くる事、昔の人は、少しも求めず、ただ、ありのままに、やすく付けけるなり。
この比は、深く案じ、才覚をあらはさんとしたるやうに聞ゆる、いとむつかし。
人の名も、目慣れぬ文字を付かんとする、益なき事なり。
何事も、珍らしき事を求め、異説を好むは、浅才の人の必ずある事なりとぞ。
訳
寺の名前、その他の物にも、名を付ける事を昔の人は少しも気どらずに、ただ、ありのままに気安く付けたものだ。
最近は、深く案じて、おのれが才覚を表そうとした様に聞こえる名が多く、煩わしい。
人の名前も、見慣れぬ文字を使おうとするのは、読みにくいだけで良い事は無い。
何事でも、目新しい事を求め、奇抜を好むのは、あさはかな人の必ずやる事だとよ。
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